奥義ブログ

チェーン展開の奥義【東京進出編】

【初日】

チェーン展開の奥義ブログではチェーン展開に必要な王道となる知識を説明したつもりですが、具体的にどこでチェーン展開をすべきかという問題があります。
業種によっては、広島の中での展開も可能です。
紙屋町店・八丁堀店・袋町店・広島駅前店・横川店等々。
広島市内という狭いエリアの中でチェーン展開できることが最高です。
何しろ人件費を初めとする本部経費がかかりません。
しかし広島市というマーケットが狭いためにみんながみんな市内で何店舗もできません。
その場合もう他地域展開しかありません。
そこで広島の社長はよく
「東京に出たい」
と言われます。
時々そういう相談を受けますが、東京に行けば大きな成功もあると思います。
東京へ行けば広島の八丁堀以上の街が山手戦の各駅ごとに展開されています。
理論的には広島で展開する商売の何十倍も拡げることが可能です。
しかし、東京へ進出する時には、いろいろ考えなければいけないことがありますので、これからのシリーズでそういった情報をお伝えしたいと思います。

【二日目】

さて、東京でお店を持つときにまず驚くのが家賃。
広島で二階以上だと坪1万円以下はザラですが、 新宿とか渋谷だと坪3万円は覚悟しないといけないかも。
へえー(><)!! 三倍ですよ。 もっと覚悟しないといけないのは、敷金・礼金・権利金とか。 敷金は広島では家賃の10か月程度考えれば良いけど、 東京では10か月ってあまり見ないなあ。 36か月もありますよ。 いやいや60か月も。 30坪の店舗、坪3万円として家賃は90万円。 もし敷金が36か月だったら、3240万円の敷金か。 そりゃ、敷金は賃借契約が終了のときに返ってくる。 でも、何か始めるときに無条件で預ける3240万円は痛い。 しかも30坪程度の店舗でどんだけ稼げるっていうの?? 別の見方をすれば3240万円もあれば30坪でデザイナーによるかなり豪華な内装でのお店ができますね。 ちょっと銭が余ってないとできませんね(><)
東京、恐るべし!!

【三日目】

さて二日目では、東京は店舗の家賃・敷金の負担が非常に高いと申し上げました。
でも、その前に最初にある関門にぶち当たります。
広島から東京に進出するときに問題なのはまず移動時間・移動費用・滞在費用です。
店舗を最初にオープンする前に東京への出張が劇的に増えます。
広島から東京へは飛行機で合計3時間程度・新幹線で4時間程度を見積もらないといけません。
テナント情報収集・業者開拓とかしようと思えば普通にしていたら日帰りはとてもムリです。
その際はホテルに宿泊するしかなく安くあげても1万円です。
今はパックとかで安く済ませられるケースがありますが、急な出張が多く、正価で負担することが多いです。
出張費用をなるべく安く抑えようと努力してもその負担は結構な金額になります。
その費用を、広島で展開する事業で稼いでいる利益で負担しないといけないのです。
また、おカネの問題だけではありません。
本拠地で利益を稼いでいるのですから、広島での仕事も相当あるはず。
東京にいればその仕事はできません。
東京へ進出の夢はいいのですが、肝心の実務が滞っては戦えません。
そんなとき東京へは日帰り出張で対応しました。
始発(6時)で行って終電(19時30分)で帰ってくると東京では朝10時から夜7時まで滞在できるのでその間に凝縮して仕事をこなします。
新幹線の中にいる往復8時間が勿体ないと思えば、行きは前日を徹夜で働き、睡眠を新幹線でとります。
帰りは書類整理と読書といいたいところですが、ビールを飲んで爆睡(-_-)zzz
しかし、それはちょっとハードですね(^^;)

【四日目】

二日目に東京での店舗の家賃・敷金が劇的に高いと申し上げました。
でも不動産経費ってそれだけではありません。
広島で展開する際には本社事務所なりが存在して それをベースに店舗が展開しています。
「いや、うちはわざわざ事務所をつくってないよ」という方も店舗が事務所兼用になっているわけです。
東京進出の場合、そういったベースはないです。
そうすると業者開拓・オープンスタッフ面接のためにも結局事務所(オープン準備室)が必要になります。
また、ずっと現場に駐在して準備業務を進めてもらうスタッフも出てきて、彼の宿泊すべき寮が必要になってきます。
また駐在すべきスタッフが一人とは限りません。
そういった事務所・寮の経費が結構かかります。
苦肉の策で、それを兼用している会社もありました。
つまりアパートを借りて、そこで昼は業者さんと打ち合わせしたり、採用面接して、夜はそこで寝泊りする。
そこまでしてもやはりおカネは出て行きます。
売上ないのに(涙)
まあ、こういうことまで考えると東京に進出できるのは、そこそこ本拠地で稼いでいて、少々滞在費用がかかっても気にしないレベルでないとムリだと思います。
もちろんオープン準備は売上を生まないので早く切り上げたいですけどね・・・(^_^;)

【五日目】

東京に出て行ったときにビビッたのは採用費。
しかも正社員ではなくアルバイト。
当時の東京でのフロムエーの掲載料が二週間載せるだけで15万円もかかった。
広島ではアルバイト募集では月5万円しかかけていなかったのに・・・。
15万円いうたら正社員の月給に迫るものがある。
これだけあったら、今頑張っているスタッフに分けたいのに・・・。
何かR社がなぜ儲かるのかわかったような気がした。
しかも15万円かけてバンバン電話がかかってくるならわかる。
これがかかってこんのよ・・・(-_-;)
ひどいときは二週間で二件だけ電話がかかってきて、 面接の当日ブッチされたことがある。
多分あの問い合わせの電話はサクラだろう(><) 15万円が飛んで行っていってしもうた・・・。 恐るべし、東京だ(><;)

【六日目】

五日目ではで採用費がかかると申し上げました。
もちろん、給与水準は広島より高いです。
一割強は違うでしょう。
いや、もっとあるかな。
ただ、これくらいは、東京へ進出しようと思う社長には想定内の話でしょう。
バカにできないのは交通費の問題。 広島の繁華街で店舗運営する場合、そのスタッフは繁華街の近くに住んでいるケースが多いです。
通勤手段は自転車・原付。
交通費を請求されると「ええー、要るの?!」と冗談でも言えます。
でも東京では基本的にそんな都合の良い人にはなかなかめぐり合えません。 基本的に交通費がかかります。
しかも基本的に乗り換えあり。
となると通常の給料以外の交通費負担がかなりのものです。
交通費を給料の2割程度も支給しなければいけないスタッフもでてきます。
また、ここでも金額の問題だけでなく、そういったスタッフは終電以降の勤務は計算できず、 運営上も問題を抱えます。
東京は厳しい・・・。

【七日目】

さて、今までいろいろ東京で展開するリスクの話をしてきました。
想定外のコストが結構かさみます。
さて利益=収益ー費用です。
費用が増えても、それを上回る売上増があればいいわけです。
さて、東京における店舗はどうなのでしょうか?
かりにも東京へ進出しようというチェーン店はある意味広島でそれなりに繁盛しているのだと思います。
広島でも怪しいというのだったら問題外ですが・・・。
広島である程度繁盛しているのであれば東京でその二倍も売上をたてることは難しい。
売上=客数×客単価だから、席の間取りをきつくして多少席数を増やしてもそれほど変わらない。
また、深夜まで客が入るかと言えば、東京では客に終電の意識が高く、 23時を過ぎると客がサッと引けていきます。
やっぱりタクシーでは高くて帰れないですからね。
広島の繁盛店であれば、まだダラダラと客がいる時間ですが・・・。
メニューも明らかに客単価が変わる程変えることは難しい。
サービス料10%なんて、怖くてつけれないですねえ。
あれ・・・?
じゃあ、何のために東京に出すのでしょうか?

【八日目】

前回では東京で売上増を期待してもそんなに伸びないよ。
と申し上げました。
厳密に話させていただきます。
広島で繁盛していたモデルを東京に持ち込むのが、東京での成功の安全策ですね。
マクドナルド・ガストとかのナショナルチェーンは全国統一のメニューです。
広島での繁盛実績のあるメニューはある意味繁盛の方程式なので、なるべくいじりたくない。
東京進出の際、本来はそのときこそメニュー改編して客単価アップを狙うべきですが、メニューの価格編成は生命線。
せいぜい一部メニューの価格調整とかサービス料10%付加するとかの小細工しかできません。
まあ、東京はアベノミクスで好景気で、シャンパンとかの高価格商品がどんどん出て結果的に単価が上がるかもしれません。
ただ、意図的にそれをつつくのはギャンブルですのであてにならないです。
事業計画の際に織り込むのは危険です。
客単価が上がると言ったり、上がらないと言ったり。
微妙なニュアンスをご理解ください。

【九日目】

八日目では、売上に関して客単価アップは結果的になるかもしれないが、客単価アップを狙うことは難しいと申し上げました。
売上=客単価×販売数です。
客単価アップがイマイチなら狙うは販売数ですね。
まずは席数を増やしましょう。
店舗に限っては余程の高級店でもない限り、東京の店舗は
①席を狭くする
②席と席のスペースを狭くする
③広島では意匠をこらしていた部分も席を置いてデッドスペースを少なくする→特徴ある店ができればいいですが。
④大人数席中心の席の構成にせず、少人数席中心の構成にして、かつ宴会にも対応できるようにする→思案のしどころ
⑤どうやったら合い席が自然にしてもらえるか?の工夫
⑥トイレを狭くする→女子トイレは手が抜けませんね。
⑦厨房を狭くする→キッチンスタッフに怒られます ⑧椅子を外して立席にする→「俺の」シリーズですね。
⑨お店の外にでも席を作る→消防・保健所は文句いいますが・・・ というような知恵を絞って席数を増加。
これなら最初から狙って販売数増加できます。

【十日目】

九日目では席数増加についてお話しました。
販売数=客席×回転数
回転数を上げることによって売上増加を図れます。
しかし、普通に考えれば、東京での一般客は終電に関する意識が非常に高い。
終電が近くなると、問答無用に客は引きます。
じゃあ、どうやって??
広島の飲食店って、どんなお客さんが来るでしょうか?
夜はピークが19時入店して、2時間くらい滞在される客が一回転して、それ以降あるかないかといった感じ。
ランチをやれば夜の客単価の何分の一の単価の客が12時入店して一回転して終わり。
広島であればこれでもお店はやっていけます。
しかし、東京では、高回転を目指さないといけない。
家賃は広島の三倍以上も払っているのですから。 夜も二回転以上するために17時オープンする。
ランチタイムは調理時間を短縮して限られたピークタイムの中で回転を上げる。
夜とランチの間のアイドルタイムも喫茶客を取りたい。
いやいや、アイドルタイムにパーティを取ろう。
深夜もバー代わりとしても回転させたい。
何とかいろいろ知恵を絞って高回転を目指す。

【十一日目】

ところで、この奥義シリーズは私の地元の広島のような地方都市から東京へ進出したい方を特に想定して書いています。
今まで書いてきたある程度のまとめとして
①東京に来てもバラ色の売上があるとは限らない
②家賃急騰は必至。敷金も恐ろしい。店以外にもかかる。
③人件費は上昇。採用費もかかる。
という感じですかね。
最初の一店舗目はすごくお金がかかります。
しかも、失敗したら次がありません。
ベンチャー企業は後がありません。
百戦百勝でないといけないのです。
常識的にはそこで採算がとれるかいろんな分析をします。
周囲の店舗の状況、人の流れ。
特にターゲットの客層とか。
そこで想定される投資額を出して、想定される売上で損益シミュレーションして投資額が賄えるかどうか検討します。
あっ、思うのですが、こういった計算とかシミュレーションとか社長になるべく近い幹部がやるような体制を築いておきたいところです。
なぜなら、社長が気に入っている案件でもそのような損益シミュレーションをして 「社長、ここでは不採算店舗になる可能性がありますから、やめましょう。他の場所にしましょう」 と止める大事な仕事がありますので。
社長が自分で損益シミュレーションすればいいでしょうが、自己コントロールは難しいでしょう。

【十二日目】

さて、前回出店前の損益シミュレーションの重要性を話しました。
ところが、東京の繁華街の不動産状況はすごいですよ。
いい情報が入ってすばやく問い合わせてももう数十件他の会社も手を挙げています。
一両日中に決まってしまいます。
総額一億円もするような投資を大方一日で決めているのです。
東京に出店する会社の中には地方で大きくチェーン展開していてイメージアップのために東京出店を考えている大企業もあるのです。
そういった会社は採算度外視しているので当然出店意思表示は早いです。
こういった企業を相手に戦わないといけない地方ベンチャー企業は
①損益シミュレーションを素早くできるようにする→日ごろからの基礎データ整理が大切
②シミュレーション後の素早い意思決定システムの確立→「ああでもない、こうでもない」曖昧なことばかり言って無駄な時間をかけず契約という行動に移るという改善が絶対です。
そうしないと会社のFAXに多くの無駄な不動産情報がどんどん流れてくる毎日が続くことになります。

前回は一旦オープンになった不動産情報において迅速な出店判断ができるように システム化を日頃からしておくべきという話でした。
今日はその前の段階の話です。
経験則として、東京で比較的よい条件の不動産は他のテナントが退店したとき、すでに次のテナントは決まっていることが多い。
すでに何か月も前に決まっているとか。
ということは日頃からいい情報を持っている不動産屋と情報交換を頻繁にやっておかないといけませんね。
また、東京では「ええっ、こんな人が・・・」というような人がいい情報を持っていることもあるので要注意です。

【十三日目】

大事なことを言い忘れていました。
東京へ進出しようという企業の方は広島である程度の経営基盤ができていて、いい物件があると容易に出店できると周囲に認められているような企業の方が多いと思います。
そういう企業は、広島では、
取引業者も
就職を希望する方も
不動産屋さんも
その企業の広島での信用で向こうから勝手にやってくる状態も。
ただし、そういった企業も東京では目立ちません。
年商からいえば10倍以上もあるような企業が星の数ほどあります。
そのなかでは広島の企業も石ころでしかありません。
情報は向こうから勝手に来ません。
取りにいかないと!!
信用もありません。
仕入業者の開拓も簡単ではありません。
広島の業者からの紹介をもらうとか知恵を絞らないといけません。
要は広島で成功している企業も東京では
初心に戻って
プライドも捨てて
がむしゃらにやらないとダメ
ということです。
意外とこれが切実な問題です。

【十四日目】

今日はさらなる東京の奥義を思い出しました。
本当に大事な話です。
東京でどうしたら繁盛するか。
軟弱な話ですが、マスコミです。
プレスです。
プレスリリースが重要です。
広島でもプレスリリースは大事です。
平日の奥様向けの番組でも取り上げられると、その日から三日間ぐらいはその効果が抜群に出ます。
ただし、特需景気はそうは続かない。
でも東京では一旦取り上げられると一年以上もその効果が見込めます。
何が違うかって。
市場の規模です。
広島市は人口100万人の政令指定都市ですが、東京は1300万、広く関東と埼玉・神奈川・千葉も合わせれば3500万人。
マスコミがうまく取り上げてもらえれば、万が一リピーターを獲得できなくても、広島の35倍は寿命を長くすることができるという風にも考えられます。
それで東京では「旨くとも何ともない店」にも行列があるのです。
反面自分の旨い店も、マスコミに取り上げなければ、 ただの自称「旨い店」で終わってしまいます。
じゃあ、マスコミにどうしたら取り上げてもらえるのか?
挨拶状出したり、オープンレセプション等いろいろありますが、せめて挨拶状の配布は徹底するべきです。
話はそこから・・・。